各種がんの治療について

がんにはさまざまな種類や治療法があります。専門分野とそれを越えたチームで、患者さんひとりひとりに最適な医療を行います。

胃がん

胃がんと診断されました患者さまは、当院を紹介受診されますとまず、詳しい内視鏡検査・CT検査を受けていただきます。

この検査で、転移の可能性がほぼゼロと判断された患者さまは、消化器内科にて内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)での根治が可能となります。これは胃カメラで行う治療であり、患者さまのからだへの負担は少なくすみます。当院では1000件を超える治療実績があり、近年の出血率は2%未満、穿孔率は1%未満と高い安全性を誇っています。

転移の可能性がわずかでもある患者さまは外科・消化器外科で手術を受けていただきます。前述の詳しい検査でステージ I期(全体の約4割)であれば、傷の小さな腹腔鏡下手術を行うことができます。II期およびIII期の患者さまは開腹手術を受けていただき、術後に期間限定の抗がん剤治療を行います。遠くに転移を伴うIV期の患者さまは、腫瘍内科と相談して、抗がん剤治療か手術か相談します。また、切除後に問題となる栄養障害を予防・改善するために、入院中から退院後まで管理栄養士による栄養相談を行いサポートしてまいります。

当院では様々な科および部署が連携して、それぞれの患者さまに合った治療を提供します。初診は消化器内科でも消化器外科でも問題ありませんので、当院外来を受診してください。

消化器内科 外科・消化器外科

<2021年症例胃がん治療別件数>

① 胃がん外科的治療年間症例数

開腹手術 腹腔鏡手術 ロボット手術
18例 24例 33例 75例

② ①のうち、術前・術後に薬物療法を行った症例数

症例 症例数
術前のみ薬物療法を行った症例数 0例
術後のみ薬物療法を行った症例数 18例
術前・術後ともに薬物療法を行った症例数 1例

③ 胃がん内視鏡治療症例数

症例数
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) 66例

大腸がん

大腸がんと診断されて当院にご紹介頂いた患者様には、まずがんの転移の有無を調べるためCT検査を、がんの深さと場所を確認するため内視鏡検査と大腸バリウム検査を受けていただきます。これにより患者様の「ステージ」を確認し、それぞれのステージに応じた治療を行なっていきます。 ステージ0ならば内視鏡的粘膜切除(ESD)、ステージ1-3ならば手術、ステージ4ならば抗がん剤治療が基本となります。 当院では、患者様に負担の少ない腹腔鏡手術に力を入れています。ご高齢の方でも術後翌日から歩行でき、術後7日で元気に退院されています。また、消化器内科・外科・消化器外科・腫瘍内科・放射線科の連携が良いのが当院の特徴であり、必要なときに内視鏡や抗がん剤のエキスパートに治療していただけます。

大腸がんは比較的治りやすいがんであり、例えばリンパ節転移のある進行がん(ステージ3)でもきちんと治療すれば78%の方が治癒しています(当院成績)。大腸がんと診断されてもあわてずに、当院外来にご相談ください。共に治療に取り組んでいきましょう。

消化器内科 外科・消化器外科

<2021年症例大腸がん治療別件数>

① 大腸がん外科的治療年間症例数

開腹手術 腹腔鏡手術
結腸がん 59例 74例 133例
直腸がん 25例 39例
(うち、35例はロボット手術)
64例
84例 113例 197例

② ①のうち、術前・術後に薬物療法を行った症例数

症例 症例数
術前のみ薬物療法を行った症例数 3例
術後のみ薬物療法を行った症例数 55例
術前・術後ともに薬物療法を行った症例数 2例

③ 大腸がん内視鏡治療症例数

症例 症例数
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) 58例
内視鏡的粘膜切除術(EMR)、ポリペクトミー 77例
135例

肝臓がん

肝臓に腫瘍が発見されて当院を受診された患者様には、画像検査(造影CTおよびMRI検査・造影超音波検査)を受けて頂き、肝がんの確定診断を行います。他の医療機関で既に画像検査を受けていらっしゃる方は同じ検査を受けて頂く必要はありません。肝がんの確定診断後、肝機能および腫瘍数・腫瘍径により、その患者様に最も適した治療を提示し相談させて頂きます。当科ではラジオ波焼灼療法(RFA)・経カテーテル的肝動脈塞栓術(TAE)・動注療法(HAIC)・全身化学療法など多彩な治療を施行しており、外科・消化器外科・放射線科と連携して肝切除や放射線療法も行っています。治療開始までの期間はRFA・TACE・HAIC・化学療法では1-2週間以内です。全身化学療法に関しては新規薬剤の臨床試験も積極的に行っており、最新・最良の肝がん治療を提供できる体制です。肝疾患拠点病院・がん拠点病院であり8名以上の肝臓専門医が勤務しておりますので、肝がんの疑いと診断されてもあわてずに、当院外来にご相談下さい。

消化器内科

<2021年症例肝がん治療別件数>

① 肝がん手術年間症例数

症例 症例数
原発性肝がん(肝細胞がん、肝内胆管がん、その他の悪性腫瘍) 14例
転移性肝がん 8例

② 肝がんに対するアブレーション等の年間症例数

症例 症例数
ラジオ波焼灼術※ 173例
※のうち、原発性肝がん 171例
※のうち、転移性肝がん 2例
肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動脈塞栓療法(TAE) 138例

③ 分子標的薬による治療を行った症例数

分子標的薬による治療を行った症例※ 62例
※のうち、免疫チェックポイント阻害薬併用した症例数 53例

肺がん

肺がん

1.肺がんの治療では、多くの場合手術、化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療が必要となります。そのため、呼吸器内科、呼吸器外科で毎週合同カンファレンスを開催し、また放射線治療科とも必要時検討して、それぞれの患者様に最適な治療方針を決定しています。痛みや息苦しさなどの症状のある患者さんに対しては、緩和ケアチームが早期より介入して症状緩和に努めています。

2.近年の薬物治療の進歩を生かすためには、その患者さまに最も効果的な薬物を選ぶ必要があります。適切な薬物を選ぶために、ガイドシース併用気管支腔内超音波断層法(EBUS-GS)、超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)、放射線科IVR専門医によるCTガイド下生検など高度な技術で組織を採取し、精密な組織診断に努めています。

3.積極的治療から緩和治療に至るまで、医師、がんに関わる専門看護師、医療連携室などが連携して関わり、患者さんの意向に沿った地域連携を実現していくように努めています。

呼吸器内科 呼吸器外科

<2021年症例肺がん治療別件数>

① 肺がん外科的治療年間症例数

全摘出 肺葉切除 区域切除 楔状切除(部分切除)
0例 64例 33例 11例 108例
うち胸腔鏡下手術症例数 89例

② 肺がん非手術症例数

症例 症例数
非手術で放射線治療をした症例※ 25例
※のうちSBRT(体幹部定位放射線治療)症例 12例

③ 薬物療法による治療を行った症例数

2021年に新たに薬物療法を行った症例※ 96例
※のうち分子標的治療薬による治療を行った症例  23例
※のうち免疫チェックポイント阻害薬による治療を行った症例 33例

乳がん

乳がんが疑われ当院に紹介となった患者様には、まず生検ならびに画像検査を行い、その患者様に適切な治療を提示・相談します。乳がん治療には手術、放射線、化学療法などがあります。また、乳がんは若年の患者様も多く、再建手術やリンパ浮腫といった特有の問題もあります。当院では多岐にわたる問題に対してそれぞれの専門家が対応できるように、チーム医療を行っています。具体的には放射線科、腫瘍内科、形成外科、リハビリテーション科、心療内科、緩和ケア科、歯科と緊密に協力しています。

手術においては、拡大手術から腺葉切除術のような小さい手術まで可能ですが、根治性を低下させることなく整容性も考慮した手術を行っています。形成外科と協力し乳房再建手術を保険で行っています。

遺伝性乳がんのカウンセリング、妊孕性温存、リンパ浮腫、セカンドオピニオンなど各種専門外来があります。また、栄養管理士によるがんに良い食事指導、認定看護師(女性)による専門外来、社会保険労務士による就労相談など、多くのスタッフによるサポートも受けることができます。

治療以外にも乳がん患者さんによる患者会の定期開催、自己検診の指導や乳がんに対する知識の啓蒙にも積極的に取り組んでいます。

乳がんの患者様、または乳がんが心配な方もお気軽に当科にご相談ください。どうぞよろしくお願い致します。

乳腺外科

<2021年症例乳がん治療別件数>

① 乳がん手術年間症例数

症例 症例数
乳がん切除術※ 242例
※のうち乳房温存手術(乳房部分切除術) 54例
※のうち術前化学療法をおこなった症例 26例
※のうち術後化学療法を行った症例 37例

② 乳房再建術症例数

症例 症例数
同時再建(一次再建) 7例
二次再建 0例

③ 放射治療症例数

症例 症例数
放射線治療を行った症例※ 148例
※のうち、全乳房照射した症例(乳房部分切除後) 105例
※のうち、乳房全切除後放射線放射線治療を行った症例(胸壁+リンパ節領域) 43例

前立腺がん

どの病院のホームページでも多くの治療法が詳しく述べられています。でもどの治療法がよいか迷われる方が多いのではないでしょうか。当科の特徴は、「体に優しい検査・治療(本当に必要なものを必要な時に必要なだけ)」です。

1.MRI検査:最新のMRIでは前立腺のどの部位が疑わしいかを診断できるようになり、「針生検」は本当に必要な方にお薦めしています。
2.手術:ロボット支援手術ではない従来の開腹手術ですが、小さい創(9㎝)、短い入院(9日間)で、術後の尿失禁の回復も早いです。
3.放射線照射:IMRTによる高線量の照射が可能です。
4.PSA監視療法:経過を見ながら必要な時期を見極めて治療を開始します。
5.地域連携パス:全国に先駆けて2009年からかかりつけ医との二人主治医制による連携診療を行っています。あなたの体全体、生活をよく知っているかかりつけ医との協同診療により、住み慣れた地域で安心に暮らすことが可能です。

泌尿器科

<2021年症例前立腺がん治療別件数>

① 前立腺がん外科的治療年間症例数

前立腺がん手術(前立腺全摘術)症例数※ 36例
※のうち、開腹手術 0例
※のうち、ロボット手術 36例

② 前立腺がん根治目的の放射線治療症例数

外照射 36例
うちIMRT(強度変調放射線治療) 36例

子宮・卵巣がん

子宮・卵巣がん

当科は、患者さんにとって最善であり納得していただける医療を提供するために、標準治療から先進医療までを視野に入れた幅広いがん診療を行う事を目指しています。当院には婦人科腫瘍学会認定専門医が6名在籍し、婦人科腫瘍学会指定修練施設として認定されています。また日常診療は、婦人科医、腫瘍内科医、放射線診断・治療医、病理医、緩和ケア医や多職種でチームを組んで最適な医療を提供しています。

当院婦人科の特徴としては、
1.豊富な手術件数に裏打ちされた確実な手術治療
当院では年間婦人科手術は1,000件程度が行われ、経験豊富な医師により確実で安全な手術を提供しています。
2.低侵襲な腹腔鏡下手術の積極的導入
傷が目立たない、日常生活への復帰が早いなどの利点がある腹腔鏡下手術を積極的に行っています。子宮体がん、子宮頸がんでは病期に応じて選択し、現在では子宮体癌の50%を腹腔鏡下手術で行っています。
3.進行がんは集学的治療で治癒を目指します
進行がんに対しては、腫瘍摘出拡大手術、放射線治療、薬物治療を組み合わせた集学的治療を行い、優れた治療成績を実現しています。
4.女性のライフスタイルを重視した治療を提供します
女性の一生涯(思春期から妊娠・出産・育児、更年期、高齢期まで)を見据えた治療や支援を、患者さんとの対話を通して提供します。
5.充実したサポート体制で安心して治療を継続できます
がん遺伝カウンセリング、リンパ浮腫ケア、心理的サポート、就労支援相談など、がんの治療の継続に必要なサポート体制が充実しています。いつでもご相談ください。

婦人科がんと診断された患者さん、婦人科がんが心配な方も、お気軽に当科にご相談ください。

産婦人科

<2021年症例子宮・卵巣がん治療別件数>

① 子宮がん(0期は除く)外科的治療年間症例数

切除手術年間症例数 うち腹腔鏡手術
子宮頸がん 31例 0例
子宮体がん 97例 30例
(うち、ロボット手術 4例)

② 卵巣がん外科的治療年間症例数

原発性卵巣がん切除術 61例

血液がん

血液がんには大きく分けて、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫の三種類があります。また白血病の前段階とでも言うべき骨髄異形成症候群も広い意味での血液がんと言えます。白血病や骨髄異形成症候群は発熱や貧血・出血症状、悪性リンパ腫はリンパ節の腫れや発熱、多発性骨髄腫は原因不明の腎障害や骨折などで発症することが多いですが、無症状で血液検査の異常のみで見つかることもあります。当科は年間新規患者数が都内5位(2015年)と都内でも有数の患者さんが集まる血液内科であり、複数の血液専門医でレベルの高い診療を心掛けております。無菌室が10床有り、急性白血病などに対する化学療法や悪性リンパ腫や多発性骨髄腫に対する自家末梢血幹細胞移植を積極的に行っています。昨今血液がんの治療の進歩は目覚ましく、治療成績も向上していますので、しっかり治療を受けて頂くことがとても大切です。血液がんの疑いがあると言われたら、いつでも当科にご相談下さい。

血液内科

  • 血液がん
  • 血液がん
<2021年症例血液がん治療別件数>

① 血液がん新規患者数

患者数
急性骨髄性白血病 17人
急性リンパ性白血病 5人
慢性骨髄性白血病 11人
慢性リンパ性白血病 6人
骨髄異形成症候群 29人
悪性リンパ腫・非ホジキンリンパ腫 65人
悪性リンパ腫・ホジキンリンパ腫 4人
多発性骨髄腫 20人
成人T細胞白血病・リンパ腫 3人

耳鼻科・頭頸部がん

耳鼻科領域のがんは、咽頭がん、喉頭がん、甲状腺がんがあります。いずれも当院で治療可能ですので、これらのがんと診断されたら当院にご相談ください。

1.咽頭がんについて
咽頭は鼻の奥から食道までの領域です。咽頭はさらに上、中、下と3つの領域に分かれます(下図2)。
・上咽頭がん:放射線が効きやすいがんであるため抗がん剤を加えた化学放射線治療を行います。
・中咽頭がん:上咽頭がんと同様に化学放射線治療を行うことが多い部位です。初期のがんである場合や、化学放射線治療ができない、もしくは治療後にがんが残存した場合には手術を行うこともあります。
・下咽頭がん:がんが粘膜までにとどまる表在がんでは、手術のみで治療を行います。表在がんより進んだ初期のがんに対しては化学放射線治療を行い、進行がんに対しては手術で腫瘍を切除し、その後に空腸を移植する手術を行うことが一般的です。

2.喉頭がんについて
喉頭がんの治療には、喉頭の重要な機能である発声機能を温存しつつ、病気の根治を目指すことが重要であり、年齢や全身状態などを考慮しながら患者様と相談し決定していきます。
早期がんに対しては通常、治療後の機能障害が少ない放射線治療を第一にしています。その他にも、機能障害は起こるものの治療期間が短いレーザー手術も行っております。
進行がんに対しては化学放射線治療を行うことで機能温存を図りますが、場合によってはがんの根治を優先し、喉頭摘出術を行うこともあります。

3.甲状腺がんについて
甲状腺がんの治療は手術による手術(甲状腺切除)が第一選択です。甲状腺がんの大半は乳頭がんや濾胞がんでというタイプで、進行はあまり早くありません。しかしながら放射線の効果はあまり期待できないため早期であっても手術を行います。肺転移などの遠隔転移をきたしている場合、術後の放射線ヨード治療を要する場合があるため、甲状腺全摘出術が必要です。一方、未分化がんは、かなり進行の早いタイプのがんであり、手術を中心として放射線治療や化学療法を組み合わせた治療が計画されますが、現実には治療をすることさえ困難な場合もあります。

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

喉のイラスト出典元:医療事典MEDLEY
閲覧日:2018年7月5日

<2021年症例頭頚部がん治療別件数>

① 頭頚部がん治療年間症例数

新規症例数(手術、薬物治療、放射線治療開始症例) 手術数
咽頭がん 18例 7例
喉頭がん 9例 9例
口腔がん 28例 21例
鼻・副鼻腔がん 2例 0例
唾液腺がん 9例 6例
甲状腺がん 17例 17例
その他 1例 1例

脳腫瘍

当科で治療している悪性脳腫瘍は、大きく以下の2種類に分けられます。
1.神経膠腫 脳細胞から発生する脳原発の悪性腫瘍
2.転移性脳腫瘍 他の臓器で発生したがんが脳に転移したもの

神経膠腫にも多くの種類がありますが、その中から最も悪性度の高いgrade4の膠芽腫を紹介します。この腫瘍は周囲の正常脳に入り込む性質(浸潤性)があるため、手術で完全に取り切ることが難しく、腫瘍細胞がまわりの脳に残ってしまいます。従って術後に放射線治療や化学療法が必要になります。このように治療困難な腫瘍に対しても、当科では効果の高い新しい薬(分子標的薬;アバスチン)などを用いて積極的に治療に取り組んでいます。そして非常に良い結果を出しています。
「がんの脳転移」とも言える転移性脳腫瘍に対する治療には、手術(開頭腫瘍摘出)、放射線治療(腫瘍の数によって脳全体に照射したり、ピンポイント照射したりします)、化学療法があります。 院内のネットワークを活かして相談し、患者様の状態に適した治療を選択しています。脳腫瘍と診断されたら是非当院外来にご相談ください。

脳神経外科